Azure Blob Storage と Azure File Storage(正式名称は Azure Files)は、いずれもクラウドにデータを保存するために設計された Azure サービスですが、用途が異なります。BLOB ストレージは非構造化データの処理に最適で、ファイル・ストレージは共有アクセスで構造化データを管理するのに優れています。類似点と相違点について見ていきましょう。
Azure における BLOB ストレージの概要と仕組み
Azure Blob Storage は、Microsoft のクラウドベースのオブジェクト・ストレージ・ソリューションです。非構造化データを BLOB(Binary Large Object)として保存し、複数のアクセス層を利用できることで、スケーラブルで安全性が高く、コスト効率に優れたストレージを実現します。BLOB は、ドキュメント、画像、動画など、多様なデータタイプに対応します。
BLOB ストレージの主な機能と概念は、次のとおりです。
- BLOB:基本的なストレージ単位。BLOB には、次のようなものがあります。
- ブロック:大量のデータに最適で、効率的なアップロードのためにブロックに分割されます。
- ページ:ランダム・アクセスに最適で、仮想ハードディスク(VHD)ファイルで使用されます。
- 追加:追記操作用に設計されており、多くの場合、ログ記録などの用途で使用されます。
- コンテナ:コンテナはディレクトリのようなもので、ブロックを整理します。各アカウントには複数のコンテナを設定できます。
- アクセス層:Azure Blob Storage は、ホット、クール、アーカイブのアクセス層を提供し、データの利用パターンに基づいてコストを最適化します。ホットは頻繁にアクセスされるデータ用、クールはアクセス頻度の低いデータ用、アーカイブはほとんどアクセスされないデータ用です。
- セキュリティ:BLOB ストレージは Azure Active Directory と統合して認証を行い、きめ細かなアクセス制御のための共有アクセス署名(SAS)をサポートしています。
- スケーラビリティ:BLOB ストレージは、需要に応じて自動的に拡張されるため、手動の介入なしで効率的なストレージ管理を実現します。
- 耐久性と冗長性:BLOB ストレージは、複数のデータセンター間でデータを複製することで、高い耐久性を実現します。ローカル冗長ストレージ(LRS)、ゾーン冗長ストレージ(ZRS)、ジオ冗長ストレージ(GRS)などのオプションを提供し、冗長性を強化します。
- 統合:BLOB ストレージは、他の Azure サービスとシームレスに統合し、Azure Functions、Azure Data Factory、Azure HDInsight などのサービスを通じて、データ管理と処理を容易にします。
- バックアップとスナップショット:Azure Blob Storage は、コンテナに格納されたデータのポイントインタイム・コピーを作成する機能を提供することで、バックアップとスナップショットをサポートします。Azure でのバックアップは、特定の瞬間に状態をキャプチャする BLOB のスナップショットを定期的に作成することで実現できます。これらのスナップショットは、データのリカバリ、監査、一貫性のあるバックアップの作成に使用できます。さらに、Azure Blob Storage は、バージョン管理などの機能を提供します。これにより、BLOB の履歴バージョンを維持し、データの整合性を確保し、さまざまなユースケースのための包括的なバックアップ・オプションを提供します。
Azure Blob Storage を利用するには、開発者は通常、Azure Portal、Azure Storage Explorer、または SDK を介して C#、Java、Python などの言語で操作します。アプリケーションは、特定の要件に基づいて保存データにアクセスし操作できるため、Azure Blob Storage は、クラウド・コンピューティングにおいて汎用性が高く、広く使用されているソリューションです。
Azure File Storage の概要と仕組み
Azure File Storage は、Microsoft Azure で完全に管理されたファイル共有サービスです。サーバー・メッセージ・ブロック(SMB)プロトコルを使用してどこからでもアクセスできるファイル共有を作成および管理できます。Windows 環境と Linux 環境の両方をサポートするように設計されており、複数の仮想マシン(VM)やオンプレミス・システム間でファイルを共有するためのシンプルでスケーラブルなソリューションを提供します。
Azure File Storage の主な機能と概念は、次のとおりです。
- 共有:ファイル共有は、ディレクトリの作成と同様に、Azure Storage アカウント内で作成されます。各共有は、複数の VM によって同時にマウントできます。
- SMB プロトコル:Azure File Storage は、SMB プロトコルを使用して、Windows 上のネットワーク・ドライブまたは Linux 上のマウント・ポイントとしてマウントできます。これにより、既存のアプリケーションやシステムとの統合が容易になります。
- アクセス制御:ファイル共有へのアクセスは Azure Active Directory(Azure AD)または共有アクセス署名(SAS)を介して制御され、安全できめ細かいアクセス制御を提供します。
- 冗長性:Azure File Storage は、ローカル冗長ストレージ(LRS)、ゾーン冗長ストレージ(ZRS)、ジオ冗長ストレージ(GRS)など、複数の冗長性オプションをサポートし、データの耐久性と可用性を確保します。
- スケーラビリティ:Azure File Storage は、需要に応じて自動的に拡張されます。ストレージのニーズが増大するにつれて、ファイル共有のサイズを増やすことでシームレスにスケールアップできます。
- 統合:Azure File Storage は、他の Azure サービスと統合されるため、Azure Virtual Machines、Azure App Service、Azure Kubernetes Service などのサービスと容易に連携できます。
- バックアップとスナップショット:Azure File Storage は、ファイル共有のスナップショットを作成でき、ポイントインタイムでのリカバリーが可能になるとともに、データのバックアップ・メカニズムを提供します。
Azure File Storage は、複数の VM やアプリケーションがファイルへの共有アクセスを必要とする状況に最適です。クラウド環境でのファイル共有と管理を簡素化します。
BLOB ストレージとファイル・ストレージ
前述のように、BLOB ストレージとファイル・ストレージは、冗長性オプション、Azure AD を介したアクセス制御、共有アクセス署名、他の Azure サービスとの統合を提供します。選択は、使用するデータの性質と、特定のユースケースのアクセス要件によって異なります。
BLOB ストレージとファイル・ストレージの違いについて詳しく見ていきましょう。
データ構造とユースケース
BLOB ストレージ:
- 画像、動画、バックアップなどの非構造化データに最適
- スケーラブルでコスト効率の高いストレージを必要とするシナリオに最適
ファイル・ストレージ:
- 階層構造で整理された構造化データ向けに設計
- ファイルへの共有アクセスを必要とするアプリケーションに最適
アクセス・プロトコル
BLOB ストレージ:
- REST API、SDK、Azure Storage Explorer などのツールからアクセス
- アプリケーションが保存された BLOB と対話するためのプログラムによるアクセスを提供
ファイル・ストレージ:
- Server Message Block(SMB)プロトコルを使用してアクセス
- Windows および Linux 環境とのシームレスな統合を可能にし、ネットワーク・ドライブ・アクセスを提供
データ管理と操作
BLOB ストレージ:
- ブロックベースの効率的なアップロードにより、大量のデータを必要とするシナリオに最適
ファイル・ストレージ:
- ファイル共有を活用し、階層構造を提供
- 複数の仮想マシンやアプリケーションがファイルへの共有アクセスを必要とする状況に最適
冗長性と耐久性
BLOB ストレージ:
- ローカル冗長ストレージ(LRS)、ゾーン冗長ストレージ(ZRS)、地理冗長ストレージ(GRS)などの冗長オプションを提供
- 複数のデータセンターでレプリケーションを行い、高い耐久性を確保
ファイル・ストレージ:
- データの耐久性と可用性のための冗長性オプションをサポート
- オンデマンドで自動スケーリングが可能なスケーラブルなストレージ・ソリューション
まとめ
BLOB ストレージとファイル・ストレージは Azure のクラウド・ストレージ・サービスの基盤を共有しています。しかし、それぞれの特定の機能は、異なるデータ・ストレージのニーズに対応しています。データの性質、アクセス要件、開発または管理するアプリケーションの種類によって、これらを区別できます。