はじめに
大企業や中小企業は、自然災害、サイバー攻撃、人的ミスなどの脅威に対してますます脆弱になっています。これらのリスクを軽減し、ビジネスの継続性を確保するために、組織は堅牢なディザスタ・リカバリ・ソリューションを導入しています。強力なディザスタ・リカバリ・ソリューションは、データ保護における成功と失敗の違いとなります。
Microsoft Azure は、ディザスタ・リカバリを管理するための優れたツールを提供します。Azure Site Recovery(ASR)とは この記事では、ディザスタ・リカバリの概念、なぜディザスタ・リカバリが重要なのか、Azure Site Recovery に焦点を当てた Azure ディザスタ・リカバリの詳細について説明します。
ディザスタ・リカバリとは
IT およびビジネス・オペレーションにおけるディザスタ・リカバリとは、災害発生時に重要なシステム、アプリケーション、データの復旧を確実にする戦略や技術を計画、実装、管理するプロセスをさします。
災害は、洪水や地震などの自然災害からサイバー攻撃や人為的ミスまで、さまざまな形態をとる可能性があります。ディザスタ・リカバリの主な目的は、ダウンタイムとデータ損失を最小限に抑え、不利な状況でもビジネスを継続できるようにすることです。
災害は、経済的損失、評判の失墜、法的影響など、深刻な結果を招く可能性があります。したがって、ディザスタ・リカバリ計画を明確に定義することは、ベスト・プラクティスであるだけでなく、多くの場合、規制上の要件でもあります。
もう 1 つの重要なポイント:内部ディザスタ・リカバリ・インフラのハウジングは高価で、スタッフによるサポートが必要です。企業は、クラウドにインフラを格納するために、サービスとしてのディザスタ・リカバリ(DRaaS:Disaster Recovery as a Service)にますます注目しています。これにより、内部ディザスタ・リカバリ・ワークフローからクラウドベースのストレージやフェイルオーバーへのスムーズな移行が可能になり、管理者は、ローカルのダウンタイムの問題が解決するまで、クラウド・リソースに切り替えてビジネスの生産性を維持できます。
一般的なディザスタ・リカバリのシナリオ
自然災害
洪水、地震、ハリケーン、竜巻、山火事などの自然災害は、企業に大きな脅威をもたらします。これらのイベントは、データセンター、インフラ、および機器に物理的な損害をもたらし、運用を混乱させ、データ損失を引き起こす可能性があります。停電、洪水、構造的な損傷は、ダウンタイムの延長や経済的損失につながる可能性があります。
サイバー攻撃
デジタル化が進む世界では、サイバー攻撃は永続的で進化する脅威です。ハッカー、マルウェア、ランサムウェア、フィッシング攻撃は、機密データを危険にさらし、運用を混乱させ、財務上および評判上の損害をもたらす可能性があります。サイバー攻撃からの復旧は複雑で時間がかかる場合があります。
ヒューマンエラー
サイバーセキュリティ対策が万全であっても、人為的ミスはデータの損失につながる可能性があります。これらのエラーには、重要なファイルの偶発的な削除、機密情報の誤処理、システムやアプリケーションの誤設定などが含まれます。
Azure ディザスタ・リカバリ:概要
ASR とは
Azure Site Recovery (ASR) は Microsoft の優れたディザスタ・リカバリ・サービスであり、事業継続性の確保において重要な役割を果たしています。ASR は、仮想マシン(VM)やワークロードを、オンプレミスのデータセンター、他のクラウド・プロバイダ、Azure リージョンから Azure にレプリケートするシームレスで信頼性の高い方法を提供します。このレプリケーションにより、重要なデータとアプリケーションを確実に保護し、災害時の迅速なリカバリを可能にします。
ASR はスタンドアロン・サービスであるだけでなく、他の Azure サービスとシームレスに統合できるため、Azure エコシステムに投資する組織にとって堅牢な選択肢となります。
ASR の機能とメリット
ASR は、自動フェイルオーバー、リカバリ計画のオーケストレーション、カスタマイズ可能なリカバリ・ポリシーなどの主要な機能を提供します。Azure のグローバルなプレゼンス、スケーラビリティ、従量課金制の価格モデルにより、従来のソリューションやその他のディザスタ・リカバリ・ソリューション・プロバイダと比較して、ディザスタ・リカバリのためのコスト効率と信頼性の高い選択肢となっています。
Azure ディザスタ・リカバリの仕組み
レプリケーション
Azure ディザスタ・リカバリは、レプリケーションを通じてデータの安全性を確保します。重要なデータと VM を Azure に複製し、プライマリ・インフラと同期を維持します。Azure は、非同期レプリケーションや連続レプリケーションなど、さまざまなビジネス・ニーズに対応するさまざまなレプリケーション・オプションを提供します。
フェイルオーバーとフェイルバック
災害が発生した場合、Azure はフェイルオーバーと呼ばれるプロセスを使用して、自動的にバックアップ・システムに切り替えることができます。プライマリ・インフラが再び運用されると、フェイルバックにより、シームレスに元に戻すことができます。これにより、リカバリ中のダウンタイムとデータ損失を最小限に抑えます。
リカバリ計画
Azure は、組織固有のニーズにあわせてリカバリ計画を作成およびカスタマイズする柔軟性を提供します。これらの計画により、リカバリ手順の順序と依存関係を定義し、スムーズなリカバリ・プロセスを実現できます。
Azure ディザスタ・リカバリのメリット
コスト効率
Azure の従量課金制モデルでは、ディザスタ・リカバリ時に使用するリソースに対してのみ支払うため、全体的なコストを削減できます。従来のディザスタ・リカバリ・ソリューションは、多くの場合、多額の先行投資と継続的な保守費用を伴います。
スケーラビリティ(拡張性)
Azure ディザスタ・リカバリ・ソリューションは、ビジネス・ニーズに応じて簡単に拡張・縮小できます。この柔軟性により、あらゆる災害シナリオを効果的に処理するための適切なリソースを確保できます。
コンプライアンスとセキュリティ
Azure は、グローバルなコンプライアンス基準を遵守し、データを保護するための堅牢なセキュリティ対策を提供します。これは、機密情報や規制要件を扱う企業にとって特に重要です。
統合
Azure ディザスタ・リカバリは、他の Azure サービスやさまざまな Microsoft 製品とシームレスに統合し、ディザスタ・リカバリ戦略の管理を簡素化します。
Azure ディザスタ・リカバリの設定
前提条件と要件
Azure ディザスタ・リカバリの設定を始める前に、以下の前提条件と要件を満たす必要があります。
- Azure サブスクリプション:有効な Azure サブスクリプションが必要です。Azure ポータルで無料トライアルまたは従量課金制のサブスクリプションを申し込むことができます。
- ASR サービス:ASR サービスへのアクセスが必要です。Azure サブスクリプションに ASR が含まれていることを確認するか、別途購入してください。
- Azure 仮想マシン:仮想マシンを保護する場合は、Azure で実行されていることを確認してください。オンプレミスのワークロードには、Azure への VPN または Azure ExpressRoute 接続が必要です。
- ネットワーク構成:フェイルオーバー時に接続性とセキュリティを確保するためには、適切なサブネットとセキュリティ・グループを備えた Azure 内の仮想ネットワークを適切に構成することが不可欠です。
- ストレージ・アカウント:レプリケートされたデータを保存するには、Azure ストレージ・アカウントが必要です。ワークロードの I/O 要件に応じて、適切なストレージ・タイプを選択してください。
- アクセス権限:Azure Resource Manager へのアクセスを含め、Azure サブスクリプションでリソースを作成および管理するために必要な権限があることを確認します。
これらの前提条件を導入することで、ワークロードに Azure ディザスタ・リカバリをセットアップできます。
Azure VM の導入手順
Azure ディザスタ・リカバリの設定に関する簡単なステップ・バイ・ステップのガイドを以下に示します。
ステップ 1:Web ブラウザを開き、Azure ポータルに移動して Azure ポータルにログインします。Azure アカウントの資格情報を使用してサインインします。
ステップ 2:「Recovery Services ボルト」を検索して選択し、Recovery Services ボルトを作成します。
ステップ 3:Recovery Services ボルトの作成 > 基本 から、ボルトを作成するサブスクリプションを選択します。
ステップ 4:リソース・グループ で、ボルトの既存のリソース・グループを選択するか、新しいリソース・グループを作成します。
ステップ 5:ボルト名 に、ボルトを識別する名前を指定します。
ステップ 6:リージョンで、ボルトを配置する Azure リージョンを選択します。サポートされている地域を確認してください。
ステップ 7:レビュー + 作成を選択します。
Azure のドキュメントとサポート
上記の手順について詳しくは、 こちらを参照してください。詳細については、Azure の包括的なドキュメントを参照してください。さらに、Azure のサポート・チームは、セットアップ中に発生する可能性のあるトラブルシューティングや問題の支援も行っています。
Azure ディザスタ・リカバリのベスト・プラクティス
リカバリ計画の定期的なテスト
ディザスタ・リカバリ計画の策定は不可欠ですが、テストによってのみ有効性を検証できます。テストは、次のことに役立ちます。
- 計画の弱点やギャップを特定する。
- リカバリ手順が最新の状態であり、必要に応じてスムーズに実行できることを確認する。
- リカバリ・プロセスを改善し、災害発生時のダウンタイムを削減する。
Azure ディザスタ・リカバリ計画を効果的にテストするには、以下のポイントを考慮してください。
- テスト・シナリオの定義:データセンターの障害、アプリケーションのクラッシュ、データ破損など、さまざまな災害状況をシミュレートするテスト・シナリオを作成します。これにより、計画の汎用性を評価することができます。
- テストの自動化:Azure Automation または Azure Logic Apps を使用して、テスト・プロセスを自動化します。これにより、時間を節約できるだけでなく、テスト実行の一貫性も確保できます。
- 結果の文書化:各テストの結果を文書化します。これには、発生した問題や復旧に要する時間が含まれます。これらの知見を活用して、計画を微調整してください。
- 主要なステークホルダーを関与させる:テスト段階では、関連するチームやステークホルダーを関与させます。これにより、コラボレーションが促進され、災害発生時に全員が各自の役割と責任を認識できるようになります。
バックアップ戦略の策定
効果的なバックアップ戦略を持つことは、ディザスタ・リカバリ計画の基盤となります。堅牢な戦略を作成するには、まず重要なアプリケーションを特定し、その重要性と機密性に基づいてデータを分類する必要があります。全てのデータに同じレベルの保護が必要なわけではないため、リソースを適宜割り当てます。
その後、各アプリケーションの特定の要件や状況にあわせてバックアップ戦略をカスタマイズします。
バックアップをできるだけ効果的にするためのヒントをご紹介します。
- 自動化:自動バックアップ・ソリューションを実装し、手動による介入なしで、定期的かつ一貫したバックアップを確保します。
- 頻度:アプリケーションのアップデート率に基づいてバックアップの頻度を決定します。重要なシステムでは、より長い保持期間を持つ頻繁なバックアップを検討してください。
- オフサイト・ストレージ:バックアップをオフサイトに保存し、地域の災害から保護します。Azure は、セキュリティを強化するための地理的冗長ストレージ・オプションを提供します。
- テスト: バックアップのリストア・プロセスを定期的にテストし、危機発生時のデータの整合性とアクセシビリティを確認します。
リカバリ・プロセスのトレーニングと認識
効果的なディザスタ・リカバリには、十分なトレーニングを受けたチームが必要です。
- 応答時間の短縮:訓練を受けたスタッフは、災害発生時に迅速かつ自信を持って対応できるため、復旧時間を短縮し、ビジネスへの影響を最小限に抑えることができます。
- エラーの削減:トレーニングは、リカバリ手順中のエラーの可能性を低減し、重要なシステムを正しくリストアします。
組織内の復旧プロセスについての認識を高めるため、定期的な訓練や演習を行い、従業員が各自の役割と責任に慣れるようにします。これらのシミュレーションは、改善が必要な分野を特定するのに役立ちます。
また、連絡先情報やエスカレーション手順など、ディザスタ・リカバリ計画の明確で簡潔な文書も提供する必要があります。このドキュメントは、関係者全員が簡単にアクセスできるようにします。
また、オンライン・コースやワークショップなどのトレーニング・プログラムやリソースを開発し、ディザスタ・リカバリのベスト・プラクティスについて従業員を教育する必要があります。
最後に、全ての従業員がディザスタ・リカバリ・プロセスについて知らされ、災害発生時の各自の役割を認識できるようなコミュニケーション計画を策定します。
ピュア・ストレージが仮想マシンの Azure ディザスタ・リカバリにどのように役立つか
クラウド上でミッションクリティカルなアプリケーションを移行して運用することを選択する組織にとって、Pure Cloud Block Store は、アベイラビリティゾーン、地域、マルチクラウドの停止に対する包括的な保護を提供します。この堅牢なソリューションは、代替リージョンへの非同期および同期データ変更転送を通じて、ネイティブ・クラウド・ストレージのレプリケーションの耐障害性を強化し、帯域幅消費の削減、イグジットおよびイングレスのコストの最小化、データサイロの排除を実現すると同時に、シームレスなデータ・モビリティを促進します。
さらに、Pure Cloud Block Store は、厳しいリカバリ時間目標(RTO)とリカバリポイント目標(RPO)の達成に優れています。ActiveDR は、データのレプリケートを継続的に行い、ほぼリアルタイムで、ほぼゼロの RPO 目標を可能にします。また、非同期スナップショットベースのレプリケーションを、5 分という短い間隔で構成することもできます。
その他の資料
ディザスタ・リカバリの最新の動向を継続的に学習し、常に最新情報を入手し、組織の耐障害性を維持することが重要であることを忘れないでください。
Azure とディザスタ・リカバリについて詳しく知りたい方のために、信頼できる情報源とその他の資料をご紹介します。
Azure ディザスタ・リカバリの Web ページ
Azure Site Recovery のドキュメント
edX での Azure 認定コース
Pure Cloud Block Store